市長の変節

一太郎

2017年02月22日 22:57

大沼明穂市長は沼津駅付近鉄道高架事業について、昨年の市長選を通じ、「見直し、検証する」と表明していた。そして、当選後の市議会11月定例会における所信表明で「専門家による検証チームを立ち上げる」としていた。
それが一転、「世界一元気な沼津には必要」だとして、就任わずか3カ月で「鉄道高架推進」となった。約束した検証もしないで推進とは、市民も馬鹿にされたものだ。
そもそも「世界一」が何を目指して世界一かも分からないが、それよりも何よりも、「市長になるためには嘘をついてもいい」としか思えない結末は、子ども達の教育上も良くない。このことは鉄道高架の推進、見直しを別にしても、そうは言えないだろうか。
ただ、私にとって市長の変節は、「やはり」というのが実感である。
私は、市長選の告示を前にした昨年10月22日付の本紙に「沼津市長選の争点は何か」というタイトルで投稿し、立候補を予定していた大沼氏の高架事業に対する曖昧な態度を指摘して、リーダーとは、そういうことであってはいけないと暗に警鐘を鳴らした。
しかし、その曖昧さが市民の期待につながったのか、当選を果たしたが、市民の期待に応えられないのでは、「市民ファースト」ではなく、「自分ファースト」と言わざるを得ない。二枚舌、八方美人は結局、自分自身を追い込むことになる。
今となってはもう遅いが、鉄道高架をめぐる市長の対応は、市民の期待を裏切ったのみならず、政治に対する市民の不信を募らせたということで、その責任は大きい。
市長は、組織票もなく、なぜ4万3千人もの票を獲得し当選できたのか、この結果に真摯に向き合うことが必要だ。
このままでは市民の代表とは言えない。そして、自らの身は自ら処していかなければ後世まで「ふがいない市長」と言われるだろう。
カルロス・ゴーンは自著の『経営論』で、リーダーとは「自分一人でも『ノー』と言える人こそリーダーである」と論じている。
最後に市議会である。大沼市長の変節に対して市議会の空気は、当初の警戒感から安堵感さえ漂っている感じだ。
私は問いたい。嘘をつく人が、このまちのリーダーであっていいのかと。そういう政治がはびこってきたことが、今の沼津の現状を招いたのではないだろうか。
市民の代表でもある一方の市議会が、嘘をつくリーダーを仮にも認めるようであったら、市議会自体が、姿勢、資質が問われることになる。市議会の良識ある対応を望みたい。
(平成29年2月22日沼津朝日新聞 中山康之投稿文転載)


(庭の椿)



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