2017年11月20日
「貨物駅と物流」を考える
大沼明穂沼津市長が沼津駅付近鉄道高架事業の貨物駅移転先予定地の地権者のもとへ対話のために訪れた、と本紙(10月29日付)にあった。それによると、訪問は、たまたま記者が地権者へのインタビューのため地権者団体がある貨物駅予定地に隣接するテント小屋を訪れていた時だったとある。その時の大沼市長交えての1時間ほどのやり取りである。
記事にある、地権者らの鉄道高架事業の財政へ及ぼす影響、周辺環境への悪化、先祖伝来の土地への愛着など思いは、もっともである。
また、「高架事業は見直し検証する」と約束したにもかかわらず、公約をあっさりと破った市長に対しては、「信用できない人物」であると言い切っている。市長選では大沼さんを信頼し応援した地権者の人たちの悔しさを感じる。
一方、この場での大沼市長の話には、理解できるものがない。鉄道高架の問題は、市長就任して1、2ヶ月で判断できる簡単なものではない。就任1年間の市長の議会などでの言動を見ても、ご自身がよく理解されていないのでないか、と思わざるを得ない。それだけに市長の説明には説得力がない。
表題のことについてふれたい。報道された記事に地権者の話として、「市長は原に貨物駅が出来れば、物流センターを合わせて建設するので地域が発展すると持ち掛けてくる」とある。
市長は、一体どのような物流センターが貨物駅と合わせて出来ると思っているのだろうか。物流とはモノの生産と消費を結ぶ役割機能を持つ。
では、どこにそのようなモノの生産が始まり、消費というものが発生すると思っているのだろうか。そのうえで、どのような企業の製品保管など担う物流センターが出来るというのだろうか。しかも貨物駅と同時に出来るとは何だろうか。具体的なものがなく、単に物流センターという言葉を使い、あたかもまちが発展するようなことを言っては市民をだますことになる。
ついでに、沼津の新貨物駅計画について申し上げれば、これは旧国鉄の鉄道貨物輸送の合理化政策の一環である。旧国鉄再建のなかで鉄道貨物輸送は、鉄道から自動車へと変革する中で、「コンテナ輸送」と「拠点間輸送」「地域間直行輸送」を中心とした輸送方式に転換していった。全国の貨物取扱駅の集約や廃止はこの流れである。1950年代に3,800駅程あった貨物駅は、いまや244駅である。しかも半分の駅は定期貨物列車の設定がない。
鉄道貨物輸送は、長距離輸送などに最適である。また二酸化炭素を排出しないエコ輸送で環境にもいい。その必要性は理解するが、貨物駅がなぜ住宅のある原地域でなければならないのか。
全ては旧国鉄の合理化政策から始まる。沼津新貨物駅は、市民が求めたものではない。原点が何だったのか。そもそも鉄道高架は沼津にとって必要なのか。就任1年を迎えた市長には、よく考えていただきたい。
(平成29年11月19日 沼津朝日新聞「言いたいほうだい」中山康之)
記事にある、地権者らの鉄道高架事業の財政へ及ぼす影響、周辺環境への悪化、先祖伝来の土地への愛着など思いは、もっともである。
また、「高架事業は見直し検証する」と約束したにもかかわらず、公約をあっさりと破った市長に対しては、「信用できない人物」であると言い切っている。市長選では大沼さんを信頼し応援した地権者の人たちの悔しさを感じる。
一方、この場での大沼市長の話には、理解できるものがない。鉄道高架の問題は、市長就任して1、2ヶ月で判断できる簡単なものではない。就任1年間の市長の議会などでの言動を見ても、ご自身がよく理解されていないのでないか、と思わざるを得ない。それだけに市長の説明には説得力がない。
表題のことについてふれたい。報道された記事に地権者の話として、「市長は原に貨物駅が出来れば、物流センターを合わせて建設するので地域が発展すると持ち掛けてくる」とある。
市長は、一体どのような物流センターが貨物駅と合わせて出来ると思っているのだろうか。物流とはモノの生産と消費を結ぶ役割機能を持つ。
では、どこにそのようなモノの生産が始まり、消費というものが発生すると思っているのだろうか。そのうえで、どのような企業の製品保管など担う物流センターが出来るというのだろうか。しかも貨物駅と同時に出来るとは何だろうか。具体的なものがなく、単に物流センターという言葉を使い、あたかもまちが発展するようなことを言っては市民をだますことになる。
ついでに、沼津の新貨物駅計画について申し上げれば、これは旧国鉄の鉄道貨物輸送の合理化政策の一環である。旧国鉄再建のなかで鉄道貨物輸送は、鉄道から自動車へと変革する中で、「コンテナ輸送」と「拠点間輸送」「地域間直行輸送」を中心とした輸送方式に転換していった。全国の貨物取扱駅の集約や廃止はこの流れである。1950年代に3,800駅程あった貨物駅は、いまや244駅である。しかも半分の駅は定期貨物列車の設定がない。
鉄道貨物輸送は、長距離輸送などに最適である。また二酸化炭素を排出しないエコ輸送で環境にもいい。その必要性は理解するが、貨物駅がなぜ住宅のある原地域でなければならないのか。
全ては旧国鉄の合理化政策から始まる。沼津新貨物駅は、市民が求めたものではない。原点が何だったのか。そもそも鉄道高架は沼津にとって必要なのか。就任1年を迎えた市長には、よく考えていただきたい。
(平成29年11月19日 沼津朝日新聞「言いたいほうだい」中山康之)