2018年09月16日

「整備新幹線」が問うもの

時々、国政やまちづくりのことで、「これはどうなのだろうか」と思うことがある。しかし、そのほとんどは為政者らの思惑通り、「何も問題がない」かのように進んでいく。そして、「問題がない」かのように進んでいたものが、ある日突然、問題が顕在化する。
整備新幹線もそうだ。それなりに理解はしていても、全国くまなく新幹線を敷くことに、予(かね)てから疑念を持っていた。特に新幹線のルートから外れた地域は、人もこなければ、仕事もやってこない。何よりも事業の採算性がどうなのか、と思っていた。
「整備新幹線計画」は、約半世紀前に決まったもので、北海道、東北、北陸、九州の各新幹線である。うち東北と九州の福岡〜鹿児島ルートは前線開業済みである。現在は、北陸新幹線の金沢〜敦賀と九州新幹線の武雄温泉〜長崎の2区間が建設中である。
ところが、国土交通省は来年度予算で、この2区間の建設費用が人件費や資材価格の上昇のため、約3,500億円のコスト増になる、と追加費用を求めている。
一方、財務相の諮問機関である財政制度等審議会は、「事業評価のプロセスが十分に機能せず、適切なコスト管理が行われていない」と批判(平成30年4月)。同2区間の費用対効果(B/C)は、今回のコスト増を反映すると、着工の目安となる「1.0」を割り込む可能性がある(費用に対して効果が見合わないこと)。
結局、このコスト増は、国と関係自治体が負担することになるのだろうが、どちらにしても国民、そして市民に、そのツケが回る。残念ながら。
費用対効果の妥当性というと、どこかでも同じような話がある。沼津駅付近鉄道高架の事業である。整備新幹線の追加費用の話を聞くと、ますます不安になる。
沼津駅高架の事業費は、計画策定時から変わらずの787億円である。しかし、費用対効果は、平成15年には2.7だったのが、23年の再評価では1.5に見直し、さらに28年の再評価では1.24に修正。事業費、維持管理費が計画時と変わらない中での数値見直しは、極めて曖昧なものである。
「整備新幹線」が問うているのは、まさに公共交通機関全般に関するあり方の問題だと思う。沼津駅鉄道高架の問題も、この範疇(はんちゅう)にある。
前大沼明穂市長は、再検証するとの公約を反故(ほご)にし、自己検証したと推進へ舵を切ったが、整備新幹線のような事実が起きている中で、それこそ再検証の必要性を強く思う。(沼津朝日 平成30年9月12日付)
(元沼津市総合計画審議会委員)


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Posted by 一太郎 at 16:13 │Comments( 0 ) 沼津市政
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